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  • 執筆者の写真白玉

44話 没ネタ


44話に関して、

実は後書きに書いたような話まで書いたんですけどね、

どうにも話がズルズル間延びする気がして後半部分はバッサリとカットいたしました。

あそこで区切った方が読み口がスッキリするかなと。

なので没ネタになっちゃったんですけど、

あの後のアルの様子、よろしければどうぞ(^▽^)

最後の部分からの続きです。


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思わずその場にしゃがみ込んで、|顳顬《こめかみ》を押さえながら昨晩のことを思い出していく………


ええっと……部屋に戻って…彼からの魔法陣を聞いて…

それから天使だということを確認して……返事を吹きこん……


顔から血の気が引いていった。



や っ ち ま っ た ……



「何をしていらっしゃるんです?」


頭に被ったタオルで顔を覆い、机の前でしゃがみ込む俺に声を掛けてきたのはディラン。

けれど俺はそれどころじゃない。


「若様はご起床されましたか…おや?」


タイラーの声も聞こえてきた。

けれど構っている暇はない。

着替えと出立の挨拶は後でするからさ、今は迷惑を掛けた彼に何て言って謝ればいいか…


タオルで顔を覆ったままぐるぐると考える俺の耳に、「もしや…」というタイラーの声が聞こえた。


「若様…まさかとは思いますが、どなたか…例えばランネイル侯爵子息に宛てて、熱烈な言葉を綴った、こっ恥ずかしい伝言魔法陣を数十枚送りつけた、などという事は…」


その言葉に思わずバッとタイラーを振り向いた。

きっと俺の顔は真っ赤だろう。


振り向いた先には「そうなんですか?」と呟くディランと、「ああ…やはり…」と目元を手で覆って天を仰ぐタイラーが立っていた。


「この状況…20数年前の主様と同じ…

二代にわたって同じ事を繰り返すとは……血は争えない…

なんてこと……主様は奥方様……若様は……ああ、もう諦めるしか…」


「おなじ…おなじ…」と呟きながら、そのままフラフラと部屋を出て行ったタイラーを呆然と見送っていると、残ったディランがそれはもうニンマリとした笑顔を向けてきた。


「なるほど。だいたい状況は分かりました。

つまり主様も若様も、酒の酔いがごくごく限られた部分に出るタイプなのですね。

さぁ若様。まずは着替えましょう。お風邪を召されます。

そしてそれから対応策を考えましょうね。」


労るような声を掛けてきたディランにコクリと頷き、俺は今にもよろめきそうな足を叱咤して立ち上がった。


ああ、父上はこの危機にどのように対処したのだろうか…すごく聞きたい…。タイラー教えてくれるかな…あの分じゃ無理かな…。


「結果的に良かったじゃないですか。タイラー殿の様子を見るに、諦めをつけて下さりそうですし…」


俺にシャツを着せかけながらディランが朗らかに笑った。

良かった…のか?

いや、問題はタイラーじゃなくてギルバートくんなんだよ!


ふぅ…と溜息をつく俺を、さらにディランが慈愛に満ちた生ぬるい目で見つめてくる。


「大丈夫でございますよ若様。

一緒に考えましょう。オスカーも一緒に…」


それだけはやめろー!


俺の心の叫びもむなしく、俺はその後、案の定オスカーに爆笑される羽目になった。


で、結局、

そんな羞恥を乗り越えた俺はといえば、

ギルバートくんに何て言おうかとさんざん迷い考えた挙げ句、


「なんか色々ごめんね……愛しているよ」


たったひと言、

それだけを吹き込んだ魔法陣を送ることしか出来なかった。



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